眼記録

墓場夢子(眼)

あまい

母に頂いた桃を手に取るが

まだ早かったようでうまく剥けない


白くて柔らかい実から

   甘い匂いが広がる

         甘い汁がしたたる


まだ早かったようでうまく剥けない


ふと、これが少女に見える

まだ頭の未熟な少女


十分な香りと十分な糖度
最後の最後で
一皮剥けない難しさ

無理矢理こじあけられて
いびつになった体

 

その姿に自分を重ねようとしたけれど

私はもう少女と名乗れる歳ではなく

あーあ、という

それ以上でも以下でもない思い

 


母に桃を剥いてもらった夏が

あんなに遠くで

甘い匂いに包まれている

 

 最高に懐かしい夏を眺める私は

手の中で甘い汁をしたたらせる


手についた甘い汁を

まな板に残された甘い汁を

 

私はすべて舌で舐めた

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